ある自己破産者の実体験

この文章は、かつて私が自己破産申立手続を依頼された方に書いていただきました。
当時の私は、多重債務問題に全く興味が無く、一般的な司法書士と同じように登記業務のみを扱っておりました。

縁あって、この方の依頼を処理することで、とても感謝され、今は事務所の業務の大多数が多重債務問題となりつつあります。

私の生き方を変えた、そんなとある依頼人の、生の言葉です。

 


 借金のきっかけは、1997年、22歳の時でした。


その頃、私は学生で介護について学んでいました。カリキュラムの一環で、福祉施設での1ヶ月間の実習がありました。その際、既に結婚している男性と出会い、妻帯者である事を承知で、男女の関係が始まりました。


学校を卒業後、1998年4月、その男性のいる福祉施設にアルバイトで勤めるようになりました。


その男性と交際していく中で、相手は既に結婚しており、家庭がある中、職場で一緒にいない時間は、その男性は妻と一緒の時間を過ごしているのだろう、と考えてしまい、自分自身はその男性の妻への嫉妬を感じたり、将来への漠然とした不安など、様々な満たされない思いをかかえ、精神的に追い込まれていきました。


一度はその男性と別れようと思い、1999年8月、福祉施設を退職しましたが、自分の思いをどうすることもできず、別れることはできませんでした。


福祉施設退職後は、昼間は時給800円程で、飲食店でアルバイトをしていました。
が、その男性との満たされない思いをどうにかするべく、些細なきっかけで、夜、風俗営業店で仕事を始めました。そこでの仕事は、当時の私にとっては、ある種救いでした。 初めて来店するお客さんは、自分よりずっと容姿の整った女の子がたくさんいるのでそちらへ流れます。しかし、一度自分についたお客さんは私を離れません。お店の中でリピート率が一番高かったのは私でした。決して安くはないお金を払ってまで何度も私に会いに来る人がいる、そのことが、自分でもどうすることもできない思いを埋め合わせる材料になっていました。


しかし、その状態がいつまでも続くわけはありません。風俗店での仕事で気持ちを満たしきれなかった私は、必要以上の買い物をすることでどうにかしようとし出しました。


買い物依存症です。主に服やアクセサリーを買っていました。買っても2・3回身に付けたら、飽きて捨ててしまうのです。買って自分の物になった瞬間、また次の欠乏感が沸いてくるのです。


当時の収入は、昼間は時給800円で5時間位、夜間風俗店での仕事は一日5時間程度、5,000〜25,000円でした。ただ、週に何日と決まっているわけではなかったので、月収ではいくら位になるのかはよく覚えていません。


私の買い物依存は止むことを知らず、収入以上に使うようになっていきました。
はじめは、お店から借りて。
そのうち消費者金融から借りるようになり……。初めて消費者金融に手を出したのは、2000年2月、25歳の時でした。P社から100,000円借りたのが始まりです。借金に対する認識は、風俗店で仕事をしていれば100,000円借りても一週間で返すことができる、という甘いものでした。実際には、週に2・3日がいいところで、借金が増えていきました。


精神的にかなり追い込まれていた時期で、この頃に何度か、「死にたい」と思う事もあり、実際に自殺の準備までした事があります。しかし、借金が残っており、親に迷惑をかけたくないので、なんとか踏みとどまる事がありました。


1年8ヶ月間、このような生活を続けていました。その間に、すこしずつですが精神的に安定していきました。冷静さを取り戻す中で、「いつまでもこんな生活を続けるわけにはいかない」という思いになっていきました。


そこで、今までの生活を改めるべく、風俗店での仕事から身を引き、前回とは別の福祉施設で、正社員として就職することになりました。2001年4月の事です。


風俗の仕事は簡単には辞められず、退職するには2・30万程度支払わないと辞められない制度がありました。それで更に借金が増えることになりましたが、何とか新しい職場で働くことができるようになりました。


安定した給料をもらいながら、少しずつ借金を返済していきました。
が、なかなか返済できるものではありません。P社からは50万借入があり、お店からは、おそらく4・500万程。「おそらく」というのは上乗せされていたから。


よくお店から、返済催促の電話がかかってきました。返済に思うように応じることができなかった私は、お店からの電話がこわかった。返済できないという苦痛よりも、私がかつて風俗の仕事をしていたということが、人に知られるのではないかという不安、心配。


そんな時に、とあるきっかけでフルコミッション(完全歩合制)のセールスの仕事の話がきました。


会社勤めをして得られる収入には限りがある。月々の手取り22・3万、ボーナスを含めても年収350万程です。


「契約が取れたら、少しでも返済の足しになる」、勤めながら気軽な感じでやってみようと思いました。


手伝い程度からはじめたことですが、報酬を少しでも返済の足しにすることができました。半年程、本業の介護、時々セールスの仕事をする、という生活を続けていました。


そんな中、セールス会社の社長から、本業でやらないかと誘われました。
本業でやる場合には、一件契約がとれた場合の報酬は大幅にアップします。契約がとれた分だけ、そのまま報酬に反映されます。ただその反面、契約がとれなかった場合、その月の報酬はゼロです。ゼロではなく、経費(交通費・電話代・交際費等)は全て自己負担なのでマイナスです。雇用保険も社会保険もない。勤めを続けていれば、月に22・3万という収入は保障されるのです。


大変迷いましたが、より多くの収入が欲しかったので、保障のないフルコミの世界に入る事を決めたのでした。


2003年の秋、住まいをセールス会社のある東京に引っ越しました。 
はじめの一ヶ月間は思うようにいかず、尻込みし、アポイントをとることに恐れを感じ、契約はゼロでした。私の生活は本当にギリギリでした。あいかわらず続けてお店からの返済催促の電話はかかってきます。もう後へ引くことは許されない、この仕事で行くところまで行くしかないんだ、と心に厳しく言い聞かせました。


その結果からか、2ヶ月目以降は、勤めていた当時の4〜5倍の収入を得ることができました。


しかし、社長との人間関係がうまくいかず、理不尽な八つ当たりや過酷な労働条件に耐えかね、2004年6月、退職しました。 


その間に、お店から借りていたお金は何とか返済することができました。
それから、日雇のアルバイトをしながら過ごしていたのですが、この時期が一番借金に苦しんでいました。ガスも一ヶ月以上止められました。幸いにも夏場だったので、何とか水でシャワーを浴びて過ごしました。


この時期から、借金も滞納することが多くなり、毎日の取立ての電話で精神的に追い詰められていました。


それでも生活ができず、この時期にA社から借金をし始め、何とか生活をしていました。
2ヶ月日雇のアルバイトをした後、2004年8月、介護の派遣に仕事が決まりました。
しかし、雇用期間は2005年5月までと決まっていました。


また失業して、生活が苦しくなり借金が膨らんでいく、と絶望していた2005年4月、自宅の郵便受けに、司法書士事務所からのチラシが入っているのをみました。利息制限法というものを初めて知り、もしかしたら、借金を減額することができるかもしれないと思いました。

知り合いの司法書士に、任意整理を依頼して、取引明細を取り寄せてもらい、利息制限法に引き直して計算してもらったところ、借入れが多すぎてほとんど圧縮できないことがわかりました。


また、司法書士の説明だと、任意整理の場合、原則3年以内に返済する和解案を提示する、とのことでした。が、この時点で借金が260万円を超えており、ごくわずかに圧縮したところで、実際には月々の返済額は3,000円程しか減らないことがわかりました。しかも5月には、仕事が契約期間満了になる為、司法書士から「収入がない以上、月々の返済額が計算できないので、任意整理手続は厳しい」と言われました。


自殺も何度か考え、それでも親に迷惑をかけたくない一心で、なんとか返済を続けてきました。しかし、このままずっと借金を抱え、人生を立て直すこともできず、ずっと苦しんで一生を過ごすのはもう耐えられなくなったのです。


そして司法書士を通して、破産の手続きをしました。

    
今私は、長い間苦しんでいた借金から解放され、金銭的にも、精神的にも追われることのない生活を送っています。2007年11月には結婚もし、幸せな毎日を過ごしています。 


司法書士に相談を持ちかけた時のことを振り返ると、「自分は人としてもうダメなのだ」「行き着くところまで行ってしまった」「正直に話をするのは恥ずかしい」という思いでいっぱいでした。大きく「×」マークの描かれた等身大の大きな看板を、体の前後にぶら下げ、大勢の前に出ている思いでした。


今この文章を読んで下さっている、借金で苦しんでいる方に申し上げたいのは、専門家の力を借りるのは勇気のいることです。しかし、勇気をもってその門を叩いた時に、大きな解決につながる可能性があります。


債務整理とは、一言であらわすならば、一つは実際的な借金からの解放、二つ目は、精神的な豊かさを取り戻す手段だと考えます。


借金のある間は、とかく自分自身を責めます。自分で自分を、価値の無い人間に落とし入れます。「お金が無い、借金で苦しい」と、自分を責め続ける心の状態は、更なる借金を呼び込むことに繋がります。


もし、今もなお、自分を責め続けている方がいらっしゃるのなら、この文章が司法書士に相談する為の精一杯の勇気に繋がったのなら、私は嬉しく思います。

 

 

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