遺留分と遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)のために、最低限の保証として、遺産を確保する制度です。例えば、「全財産を長男に相続させる」という遺言を遺して夫が死亡した場合、夫の稼ぎで生計を立てていた妻は直ちに生活に困ることになります。このような場合、一定の割合に応じて遺産を取り戻すことができます。この割合を遺留分といい、取り戻すことを、遺留分減殺と言います。

遺留分減殺請求の範囲は、遺贈のみならず、遺言者の死亡より過去1年以内にされた贈与も、遺留分減殺の対象となります。

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人です。
1.直系尊属(子、孫等)のみが相続人である場合、被相続人の財産の3分の1
2.上記以外の場合、被相続人の財産の2分の1
と決まっています。

兄弟姉妹は遺留分がないため、兄弟姉妹に遺産を分けたくない場合は、兄弟姉妹に遺産の取り分がないような遺産分割の割合を遺言で定めることができます。

・遺留分減殺の方法

遺留分を侵害された相続人が、請求することで遺留分減殺をすることができます。遺留分減殺の方法は特に定めがありません。後日裁判などで争いになる可能性があるようであれば、内容証明郵便などを利用するといいでしょう。

<例>
平成17年5月1日に、2,000万円のA土地を長男に贈与し、平成18年1月1日に遺言者が死亡した。遺言の内容は、3,000万円のB土地を次男に相続させる、というものである。他にめぼしい遺産が無い場合、配偶者はどのように遺留分減殺請求をするか。

まず、遺留分がいくらになるかを把握するために、遺留分を計算するもととなる財産を把握します。この例では、遺贈及び1年以内の贈与ということで、A土地2,000万円と、B土地3,000万円、合計、5,000万円が遺留分算定の基礎となります。

5,000万円の2分の1が遺留分となりますので、これを配偶者の相続分、4分の2、つまり、2分の1かける4分の2、8分の2を遺留分減殺請求することができます。

5,000万円の8分の2は1,250万円です。

遺留分減殺の順番は法律で規定があり、まず遺贈を減殺して、それでも遺留分に満たなければ、さらに贈与分を減殺することになります。

この例では、遺贈のみを遺留分減殺すれば足りることになります。

3,000万円の土地のうち、1,250万円ですので、現金で1,250万円を次男に請求するか、B土地の持分12分の5(3,000万円のうち、1,250万円分)の持分を取得する、などの方法があります。


遺留分を侵害するような遺言を作成する場合は、紛争が起きやすいので注意が必要です。遺留分を侵害しないようにするか、遺留分の放棄を依頼しておくなどの措置を講じておくことが望ましいでしょう。

遺留分減殺の方法についても、遺言で定めることができます。

<記載例>
遺留分の減殺は、○○銀行○○支店 普通預金 1111111 ヤマダタロウ 名義の
銀行預金口座からするものとする。

例えば、確実にA土地を長男に相続させたい場合、かつ、遺留分を侵害する遺言の場合、このような記載をしておくことで、A土地への遺留分減殺を防ぐことができます。

なお、遺留分減殺請求権の放棄は、家庭裁判所の許可を受けることで出来ます。したがって、遺言書に遺留分減殺請求権を放棄するように記載しても、直接的な法的効果は生じません。どうしても遺産を分けたくない場合などは、廃除などの制度を利用する必要があります。


・生命保険と遺留分減殺請求権

生命保険の受取人を、夫から母に変更した事例において、母への贈与とみなして遺留分減殺請求権を行使できるかどうか、という問題があります。最高裁では、保険者から受取人に支払われるのではなく、保険金は保険会社から直接受取人に対して支払われるため受取人固有の財産であるため、贈与に当たらない、と判決し、遺留分減殺請求権の行使を否定しました。

この事例から、生命保険については、生前に受取人に指定し、遺言には一切記載しないのが一般的となっております。