安い、早い、簡単な裁判とは〜少額訴訟の基礎知識〜

裁判とは、カネがかかる、時間がかかる、面倒であるという印象が強いかもしれません。したがって、日常の中の些細なトラブルでも泣き寝入りしてしまうケースが多いでしょう。

そこで、少額訴訟手続というものができました。それこそ、「安い、早い、簡単」な手続です。私たちのような法律専門家でなくても、簡易裁判所に出向いて、備え付けの訴状のひな形に必要事項を記入の上、不明な点を職印に聴くことで、自分で手続ができます。

では、少額訴訟手続について、簡単に説明いたします。

1.60万円までの、金銭の支払を目的とする訴訟であること

実際に少額訴訟手続が取られる事件は、多い順に、
・交通事故による損害賠償請求
・敷金返還請求
・売買代金請求
・貸金返還請求
・賃料請求
・請負代金請求
・賃金請求
・交通事故以外の原因による損害賠償請求
などがあります。

これらの内容であれば、少額訴訟手続を取ることができます。

逆に、少額訴訟手続が取れない事件についていくつか挙げておきます。
・建物明渡請求
 これは、金銭の支払を目的とした請求ではありません。
・離婚訴訟
 これも、金銭の支払を目的とした請求ではありませんし、簡易裁判所で扱う事件でもありません。
・登記手続請求
 これも、金銭の支払を目的とした請求ではありません。

2.原則として一回の審理であること

法廷での手続が1回で終わります。そして、その場で判決が言い渡されます。従来の裁判であれば、何度も口頭弁論を経た上で、判決言渡期日などもあり、長期にわたる裁判も珍しくありません。

長引けば長引くほど、手間や精神的な負担、費用がかかりますが、少額訴訟手続は、訴状を提出したあと、原則として1回で決着がつき、その場で判決が言い渡されます。

3.手続が簡易であること

訴訟を複雑にしないように、反訴や控訴は禁止されています。また、裁判の際の証拠も、即時に調べられるようなもの、具体的には、書類による証拠と、当日同行する証人などに限定されます。また、裁判当日までに、全ての証拠を提出する必要があります。

また、事前に少額訴訟手続についての案内がされた上、裁判当日も、裁判官による手続の説明がなされます。

このように、複雑な手続を一切排除して、すぐに結論をだす、そのような裁判のため、あまりにも複雑な事実関係がある場合には、金銭の支払を目的とする請求であっても、少額訴訟手続になじまない場合があります。

また、反訴や控訴が禁止されるため、被告(訴えられる側)には、少額訴訟手続を拒否して、通常の裁判を受ける権利があります。

なお、少額訴訟手続は一般市民の為の手続であるので、業者に利用されないために、年10回までの利用制限があります。

訴状などの書類は、簡易裁判所の窓口でもらうことができます。

少額訴訟訴状
少額訴訟訴状.jpg

当事者の表示
当事者の表示.jpg

貸金返還請求訴訟の場合の請求の趣旨
貸金返還請求訴訟の場合の請求の趣旨.jpg

3.費用について

手続に掛かる費用ですが、訴状に貼る印紙としては、訴える金額を基準に、
・10万円までは1,000円
・20万円までは2,000円
・30万円までは3,000円
・40万円までは4,000円
・50万円までは5,000円
・60万円までは6,000円
です。

他に、切手代がかかるます。これは原告(訴える人)や被告(訴えられる人)の人数や、管轄裁判所によっても違うため、いくらとははっきりいえませんが、大体10,000円以内です。

あと、他に掛かる費用としましては、交通費や、証人への日当や交通費、電話などの通信費などがかかります。


4.少額訴訟手続の流れ

事前準備段階

・訴状を提出します。
  ↓
・訴状を審査します。
その後、訴訟進行に関して、打ち合わせをします。
  ↓
・口頭弁論期日(裁判当日)の日時を指定します。
  ↓
・訴状や、期日呼出状などが送達されます。

口頭弁論期日

・事件を読み上げます
  ↓
・裁判官による手続の説明があります。
この後、被告が希望した場合、通常の裁判へ切り替わることがあります。
  ↓
・当事者による弁論や証拠調べがあります
  ↓
・場合によっては和解が勧められます。→和解が成立すれば、訴訟は終結します。
  ↓
・和解が成立しなかったり、和解が勧められない場合には、ここで弁論が終結します
  ↓
・判決が言い渡されます。

5.少額訴訟の判決後の流れ

少額訴訟手続は、控訴が禁止されています。したがって、少額訴訟の判決に不服がある場合、「異議申立」をすることになります。

異議が申し立てられると、同じ簡易裁判所で、もう一度通常の裁判手続によって裁判がされます。この手続は少額訴訟手続とは違いますので、証拠の制限や、1回で口頭弁論を終わらせなければならない、という制限は無くなります。

この裁判の結果、和解によらず、判決が言い渡された場合、控訴が禁止されているので、いかなる判決であろうと、それで裁判は終結します。

まとめますと、少額訴訟手続による判決に不服がある場合には、控訴はできませんが異議による裁判ができます。異議による裁判に対する判決には一切の不服申立ができません。

6.和解の重要性

和解の意味は、「民事上の紛争で、当事者が互いに譲歩して争いをやめること。」とあります。したがって、「100%正義はこちらにある!」と意気込んでいる場合には、和解=譲歩というイメージから、和解なんてとんでもない、と思われるかも知れません。

そんな方にこそ、和解の重要性を理解してほしいのです。

仮に、25万円貸したけど返してもらえないため、貸金返還請求訴訟を少額訴訟手続で行ったとします。証拠も明らかで、ほぼ勝訴が見込めます。この場合の和解は極めて重要です。

貸金返還請求訴訟の場合、目的は、お金を返してもらうことです。つまり、勝訴判決をもらったとしても、それでも返してもらえない場合は、判決書はただの紙切れに過ぎません。

目的を達成するためには、強制執行を掛けることになります。強制執行を掛けるためには、さらなる費用と手間がかかります。

和解、とは、両者が合意しないと成立しません。つまり、合意した内容に関しては、守るという意思があるということです。

上記の例で言えば、25万支払え、という判決をもらうよりも、和解に持ち込んで、任意に支払ってもらうような合意をしたほうが有利な場合があります。

判決は、法律に基づく結論しか出せません。したがって、一定の場合は少額訴訟手続の特例で認められる場合がありますが、分割払いの合意をする、ということも考えられます。

また、貸金返還請求訴訟の場合は、当事者はあくまでも貸した原告と借りた被告との間でしかありませんが、場合によっては、第三者を巻き込むことができます。

例えば、お金のない被告よりも、お金のある被告の親を和解に持ち込んで、親から払ってもらう、という和解も成立することができます。仮に判決の場合は、被告の親に対する請求権は法律上存在しないので、親から払ってもらう、ということはあり得ません。

また、裁判の過程での和解ですので、和解して分割払いの合意をしたにもかかわらず、相手が支払わない場合は、判決同様、強制執行を掛けることもできます。

和解と聞くと、譲歩というイメージがあるかもしれませんが、100%こちらの言い分どおりの和解もありえます。たとえば、25万の請求において、譲歩する場合、金額を減額する場合に限るわけではなく、支払額は25万円のままであり、支払期限を延ばしたり、分割払いの合意をしたりする、ということが考えられます。

このように、和解は最終的な権利の実現(ここでの例では、お金を実際に支払ってもらうこと)の為にの手段としては、極めて重要かつ有効ですので、少額訴訟手続の際は、和解も視野に入れておくことをお勧めいたします。

しかし、判決より和解のほうがいい、とは必ずしも言えません。単なるお金の問題ならともかく、感情の問題に発展している場合です。実際に払ってもらうよりも、裁判官に、勝訴判決を出してもらう、つまり、裁判官に自分の言い分が正しい、と認めてもらう方が重要な場合もあります。

この場合は、裁判官から和解の奨励があったとしても、自分の気持ちをきちんと伝えることが重要となります。

7.当事務所への依頼


上述のとおり、少額訴訟手続は一般市民が自分でできる手続ですので、必ずしも法律専門家に依頼しなくても済みます。

しかし、何度か裁判所へ出向く手間や、健康上、精神的な負担などにより法律専門家に依頼する場合もあります。

当事務所へ少額訴訟手続を依頼頂ける場合の費用は、
訴額30万円までの場合、着手金4万円+成功報酬15%(+消費税)
訴額60万円までの場合、着手金5万円+成功報酬20%(+消費税)

を目安にご検討ください。

少額訴訟手続のご依頼は、法律相談の依頼からお願いします。